旅打ち日記 いまひとたびの京都編④ 奈良ぼっち観光 2019.11.19
旅の最終日。いつもながらに寂寥感漂う、終わりの朝。
半日後には日常を過ごす地に戻っている。一日後には完全に日常へと溶け込み、会社へ行く支度でもしている頃だろうか。
ため息つきつつ朝食会場へ。
今回泊まったのは顧客満足度1位を誇るビジホ界の雄・スーパーホテル。
噂に違わず、非常に快適に過ごすことができ、朝食もビジホメシとしてはかなりのクオリティ。旨し旨しといただく。
朝メシも入れたことだし、いつまでもため息ついてても仕方ない、明日が色あせた日になるのなら、尚更今日は楽しもうと、胸を張って足を上げてわんつーわんつーと奈良見物へ。
まずは奈良公園にて鹿とたわむれる。
よく考えたら、今回は馬を見て鹿を見る旅。イイ年して家庭も持たず、仕事に燃えるでもなく、のんべんだらりと過ごしている自分にはピッタリじゃないか。
でも馬鹿だからこそ出来る何かがあるかもしれない。とか自分に言い聞かせてみたり。
当然ルシャナブツさんへもご挨拶。
でかい。そして強い(多分)。
その他紅葉やら建造物やら見てまわる。ドラクエのお土産ももちろんゲット。
中三の修学旅行は奈良・京都だったので、当然この界隈は来ているはずなのだが、不思議と甘い苦い様々な思い出のある京都と比べ、奈良の記憶はほとんどない。
それだけに、新鮮な気持ちでアレやコレやと楽しむことができた。
とはいえ、奈良の真髄は外国人観光客やら修学旅行生やらで溢れる此の場所ではないことを少し後に知ることになるのだが……
気づいたら昼メシどき。近鉄奈良駅ほど近くにさくらバーガーなる有名ハンバーガー屋さんがあるということで、無類のハンバーガー好きとしては行かないわけにいかんと。
なんだこりゃくそうめえとペロリと食べてしまう。
テリーマンが食ってたのがこのバーガーなら、スグルも張り合わずに負けを認めていたのではなかろうか。
奈良もう一つの目的地、平城宮跡へ。
当然こちらもドラクエウォークのお土産ゲットのために行くのであり、どういう場所か特に調べもせず、ナント名前は平城京という語呂合わせなら知ってます程度の予備知識で出向いていく。当然期待度はさほど高くない。
最寄の大和西大寺駅で降りると、街はどこかうらぶれた感じがし、観光客の姿はおろか、すれ違う人もあまりいない。
こんなところにドラクエのランドマークに指定されるほど有名な観光地があるのかと首を傾げつつ歩くこと15分ばかり、ちと度肝を抜かれた。
そこにあったのはひたすらだだっ広い土地。
再建された大極殿やら朱雀門やら展示館やら、ポツンポツンとあるのだが、それらを見てまわるのにとにかく歩かねばならない。
そして思う。歴史的な遺構よりも、この何もない大地の広さにこそ、ここは価値があるんじゃないかと。
1300年ほど前に都として栄え、様々な文化が花開き、人々が生活していた場所が、今はごく一部分が保管されたり再建されたりしている以外は何もない、建物もない人もいない、ただただだだっ広い土地。
そんな景色を見渡し、そんな場所を歩き、信仰を持たぬ身でも諸行無常を感じずにはいられない。
そして感傷に浸りつつも、どこか心地良いというか、心洗われるような不思議な感覚。
「ここはいい」などと思わず呟き歩いていると、美しいすすき野原に出くわし、しばし呆然と見とれてしまう。
朱雀門まで歩いて行くと(ルートによってはこちらがスタート地点になる)、平城京の歴史を映像で見れるコーナーや、再現された遣唐使船があったり、TKO木下似の奴がいたり、普通に観光者に向けた施設もアレコレ。
こんな小さなモーターもついてない船で中国まで行ってたんかとたまげたり。
その他、復原された庭園やらも見たかったのだが、そろそろ日が暮れてきて帰途につかねばならない時間に。
ちと甘く見ていた。ここは余裕で一日費やすべき場所だったと後悔しつつの帰り道。思わず息を呑む。
たなびくすすきが夕陽を浴びて輝いている。
ここにはまた来よう。そう決意させるには十分すぎる景色だった。
近鉄線に揺られ京都へ戻り、テキトーに土産物なぞ買い漁り、あっという間に新幹線の発車時間。
もちろん帰りはいつものコレ。
ついさっきススキの美しさに感動していた男が、今度は「さ、酒」と言いながら手を震わせていたとか。
少しは京都っぽいつまみを買ってもよさそうなものだが、確かこの時の自分は「ここはあえてこれで」とか思ってたような気がする。何故かは知らん。
ビール飲んで、十分に旅の余韻に浸る間もなく、新幹線はいつも日常を過ごしている地に到着。11回目の旅打ちはこれにて終了。
あれから3ヶ月あまりが過ぎたが、次回はいつどこに行くか、まだ決めかねている。
春の阪神か、4年連続になる夏の北海道か、いや今年の夏の北海道は飛行機代ヤバいだろうし久々に新潟や小倉なんて手もあるか、アレコレ考えているだけで楽しい。
競馬関係なしでも、今回の奈良・平城宮跡のような素晴らしい場所にまためぐり合うことだってできるかもしれない。
病んではいないけど、夢は枯野をかけめぐる。