2021 日本ダービー(東京優駿) 感想戦

競馬の祭典。世代の頂点を決める戦い。この一年の集大成。

こんな日に現地への切符を手に入れられなかったのは残念極まりないが、魂だけは府中に飛ばし、テレビの前にてその刻を迎える。

◆日本ダービー

◎①エフフォーリア
◯⑩シャフリヤール
▲⑬グレートマジシャン
△⑭タイトルホルダー
☆⑦グラティアス
★⑮アドマイヤハダル

【買い目】
3連複 ①ー⑦⑩⑬⑭⑮
ワイド ⑦⑩⑬

 


【着順】
⑩シャフリヤール 福永 ◯
①エフフォーリア 横山武 ◎
⑪ステラヴェローチェ 吉田隼
⑬グレートマジシャン 戸崎圭 ▲
⑯サトノレイナス ルメール

テンはイマイチだったが、バスラットレオンが二の足でハナに行き、番手にタイトルホルダー、それを見る好位にエフフォーリアと、まあ多くの人が想定したであろう並びになる。
が、逃げ馬がもっとかっ飛ばすかなと思われたが、そこは良くも悪くも藤岡佑介、チャレンジしない無難な騎乗でペースは緩やかになる。

となると好位から速い上がりも使えるであろうエフフォーリアがまた圧勝かと思われたが、そう簡単にはいかないのが競馬。
この遅めのペースが、向正面にてスローと見てとった鞍上や、抑えが効かなくなった馬たちの早め進出を招く。
後者の代表格はサトノレイナス。レース後のコメントから察するに、もっとじっと脚を溜めさせたかった筈だが、3コーナー差し掛かる時点で3番手という、この馬がかつてやったことのないレースになってしまう。
それでも3着とほぼ差のない競馬をしているわけだから、わざわざここに出してきただけのものはある馬だなぁと。

出入りが多い中、エフフォーリアはじっと我慢。どんどん他馬に抜かれ、位置を下げていくのを見て、こちらはおいおい大丈夫かと。
が、後半5ハロン56.7のロンスパ合戦を制するにはそこでしっかり抑えておくのが肝要だった。ロスなくコーナーをまわって直線に入るや、先に行かせた馬たちを次々に抜き返し、残り300mを切ったあたりで先頭に立つや、脚色衰える様子なくゴールまでの一人旅。

……となるかと思われたが、多くの馬が前へと進出する向正面で、じっと我慢できていた者は他にもいた。
2コーナーのあたりでピタッとエフフォーリアをマークする位置につけたシャフリヤールは、向正面でも他馬につられることなく位置をキープ。倒すべき相手をしっかりと見据えた騎乗も見事なら、操縦性が高く初めての距離で抑えが効いた馬も素晴らしかった。
4コーナーから直線の入りではごちゃついてしまい多少のロスもあったが、進路を見出すや怒涛の末脚でグングン迫り、かつてこの地で2.5馬身差つけられた相手と今度はほぼ同時にゴールに飛び込む。
首の上げ下げ、ほんの僅かに運命の天秤が傾いたのは、ダービー最年少制覇を見据えていた気鋭の若武者にではなかった。

19回目の挑戦で悲願のダービー制覇を果たした男が、その年を含めた4年間で3度も勝ってしまうとは。
かつてエピファネイアとともに、ほぼ掴みかけていたダービージョッキーの座が最後の最後にこぼれ落ち、馬上でうなだれた男が、エピファネイアの子を同じような形で負かすとは。
コントレイルで三冠を決めた男が、その同じ日に翌年のダービー馬に跨っていたとは。
こんなんあるから競馬は面白い。だから競馬はやめられない。

シャフリヤールもエフフォーリアも、福永祐一も横山武史も、全てを出し切った、大満足の名勝負だった。

……のであるが、それをリアルタイム観戦時は堪能できなかった男がひとり。いや、きっと世の中に少なからずいるのでは。
残り200mぐらいのところで、エフフォーリアとシャフリヤールの着内は確定となり、まさかそっちがあんなにも僅差のつばぜり合い(しかも逆転)になると咄嗟には判断できず、当方の馬券的に重要な3着争いに目線は持っていかれてしまう。
サトノレイナスに迫れども捉えきれないグレートマジシャンがもどかしく、戸崎の名前を連呼、どうやら僅かだがこちらの方が手応えがいいかと拳を握りかけたところに、飛んできたステラヴェローチェ吉田隼人。
うおお、どっちだ!?と、全世界が1・2着争いに絶叫する中、こちらは3〜5着争いで同じように叫んでいたのだから、振り返ると滑稽なもの。しかもほんの僅かなハナ先の差で負けるというオチつき。
更に更に、皐月3〜7着組でステラヴェローチェは拾うかどうか最後まで悩んだ一頭で、当日にわか雨が降ってきた時はヒモに追加しようと一度は決意し、でもその雨もすぐにやんだため取り止めてしまったという経緯もあったりする。痛恨すぎる取り逃し。

どうせ当たらないなら、俺もシャフリヤールとエフフォーリアの追い比べに絶叫したかったなぁと。そんな面でも少し悔しいダービーになってしまったかなと。
何よりも、やっぱり現地で観たかったよ……


これで、この世代の戦いは一旦ピリオド。秋には最後の一冠を目指す者、古馬との戦いへと挑む者と、それぞれの道を歩むことになる。
例年以上に注目して追ってきただけに、思い入れもひとしおの世代になることは間違いない。彼ら彼女らの次なる戦いの幕が開く日が既に楽しみでならない。

その日はすぐにやってくる。