2021 天皇賞(秋) 感想戦

競馬との出会いが30代後半と遅かった自分は、オグリ引退とかは小学生の頃なんでまあしゃあないにしても、それよりは近い時代、自身が既に成年になっていた頃に繰り広げられていた数々の名勝負をリアルタイムで目撃できなかったことが口惜しく感じることもしばしばある。

例えばCMでも話題のウオッカとダイワスカーレットの天皇賞とか、もっと最近でジェンティルドンナとオルフェーヴルのジャパンカップとか。
思えばキッカケはあった。バイト先に競馬大好きって人がいたのは2008年秋天の前だったし、その時ハマりはしなかったが社会見学的に大井競馬場に行ってみたのは2012年JCよりも前のことだった。
どっかで競馬の魅力に気づいていればなぁ……と、これはおそらくずっと思い続けるのだろう。

一方で、この名馬に、この名勝負に間に合って良かったと思えることもしばしばある。
逆に言えば、もし今より後に競馬を始めていたら、リアルタイムで味わえなかったことを口惜しく思うだろうなと確信できるような。

そんなレースが、また一つ。

◆天皇賞(秋)

◎⑨グランアレグリア
◯①コントレイル
▲⑤エフフォーリア
注⑦ワールドプレミア

【買い目】
馬単 ⑨→①⑤

府中現地は昼頃から断続的に雨が降ったりやんだり。それでも8R9Rとあった芝のレースの内容から、本命グランアレグリアはじめ快足馬が脚を発揮できる状態だろうとジャッジして、余計な買い目は増やさずに心中。

 


【着順】
⑤エフフォーリア ▲
①コントレイル ◯
⑨グランアレグリア ◎
⑧サンレイポケット
⑮ヒシイグアス

予想記事で展開読みを書いていなかったが、確たる逃げ馬がいないので、ノリさんあたりがイタズラしなければGⅠとしてはスローペースになり、となるとどの馬も好位につけたい。
エフフォーリアは問題ないとして、昨秋以降テンの行き脚がイマイチになっているコントレイルは中団ぐらいになる可能性もある、グランアレグリアはエフフォーリアをマークする形が理想だが、流れと陣営の思惑によっては前も後ろもあり得るかなと思っていた。

果たして、絶好のスタートを切ったグランアレグリアは鞍上の意図か馬が行きたがったか、その両方が合致したか、前を行く横山親子とともに先行組に入る。あーそっちの競馬になったか、と。
それを見る好位にエフフォーリア、思ったよりやや後ろだが中団にコントレイルと、まあ想定の一つにはあった形のレースとなる。

道中淡々と流れ、1400m通過が1:24.3とはっきりスロー。勝負は直線の脚比べとなる。
ルメールとしては昨年のアーモンドアイ戴冠時とほぼ同じような競馬となり、観てるこちらも鬼脚炸裂し、後ろをグイグイ突き放してくれることに期待。
が、マイル戦では9冠女王をも凌駕する稀代の名牝も、あの日あの距離あの相手で同じ結果を出すことはできなかった。

グランアレグリアが先に抜け出したものの、好位から伸びてくるエフフォーリアに脚色劣り交わされてしまう。
更に後ろから、コントレイルがまとめて捉えんばかりの豪脚で迫るが、最後の最後で僅かに脚色鈍り、グランこそ交わしたものの、若武者が乗る若駒との差は詰めきれずに2着。

グランアレグリアは大阪杯に続いてコントレイルとクビ差、適正距離ではなかったかもしれないが決して弱くなかった。
もちろん先着した方のコントレイルが三冠馬に恥じない見事な走りだったことも間違いない。
が、そんな名馬たちより強い馬が一頭いた。
ゴールするや、横山武史は高らかにガッツポーズを決め、何かを咆哮。

満場……にはまだ程遠い客数だが、東京競馬場のスタンドからは大きな拍手。
実は今回、普段のGⅠの倍額張っており、痛みも少なくない当方も、自然と両手を叩き、勝った人馬を称えていた。
あれで負けちゃしょうがない。納得ができる。そして負けたこと以上にこんな戦いを肉眼で目撃できたことに幸せを感じるようなレースだった。

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あの日、あのレースを、あの場所で観ていた。
そんな一生モンの宝物のような思い出がたったの一万円なんて、お買い得すぎるだろうと。

………いや、悔しがらなきゃいけないところなのかもしれないが。