男の子のバイブル

この正月は実家にて甥姪たちと遊びまくった。
専ら3歳の甥っ子が離してくれず、己より30以上年上の人生の先輩を君付けで呼び、恰も便利な遊び道具かのごとくこき使ってくれた。
まあ、数年後にはこっちが構ってもらいたくても相手してくれなくなるのだろうし、幸せな時間を過ごしたと言えるだろう。

兄の一家はヨーロッパのハト時計でおなじみの某国に在住しており、年末年始と、夏休みの時期に帰ってきている。
毎年、遠い日本に一家で来れるほどの所得、境遇を勝ち得た兄に対して引け目を感じないでいられるほど鈍感にはなれない。
可愛くて仕方がない孫たちと離れて暮らしている老境の親に対して、いつになっても家族を持てそうな気配のない不肖の次男であることを、申し訳ないと思わないでいられるほど自分本位にもなれない。

日本での休みの最後の日、翌日にフライトを控え、姪っ子は自分に帰りたくない、ずっと日本にいたいとこぼした。
10歳の少女のそんな想いに対して、どんな言葉を返せば良いのか咄嗟にわからず、まあ色々あるし色んな経験できて云々と、何の本質でもない台詞しか出てこなかった自分は、人間として何と低いステージにいるのだろう。

近頃三国無双がお気に入りという7歳の甥っ子は、自分が三国志の漫画を所持していることを聞きつけたらしく、今度の夏に持ってきてほしいと要請してきた。
言うまでもないが当方が所有しているのは、蒼天航路でもなければ、何故か武将が露出の高い女性キャラ、といった代物ではなく、定番中の定番の横山光輝三国志である。

となると、問題は2つ。

自分は自動車の免許は一応持っているが、車自体を持っておらず、また超ペーパードライバーなので、全60巻を『持ってくる』ことは難しい。
まあ、ここは多少手間と金銭がかかっても、宅配便を使うことで解決しよう。

より重大な問題なのは、果たして横山三国志は7歳の男の子が読むに相応しいものなのだろうかという点で。
特にR指定はないものの、凄惨な描写はバンバン出てくる。しかも昨今の言葉でいうところの鬱エンドである。

自分がアニメ版の横山三国志を3話ぐらいまで観て興味を持ち、父親の本棚にあった吉川英治著の三国志を読破したのは小6のときだっただろうか。
当初は主人公であるところの劉備玄徳と仲間たちが、乱世を駆け抜け、天下を統一する物語かと思い読んでいたところ、アレレおかしいじゃないかと読み進めるにつれて気持ちが沈んでいった記憶がある。
それなりに分別も付きつつある高学年だったので、まあ気持ちを切り替えて蜀漢の落日まで楽しんで読ませてはもらったが、低学年の男の子であればその後の人生にも影響するレベルのショックを受けかねないのではないか。
まして漫画だと、描写がもろに視覚に入ってきて、消えない記憶として焼き付いてしまうわけで。

 

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1巻からの仲間たちが。

 

 

 

 

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40数巻でこんなことになっちゃうわけで。

 

これも社会勉強と頼まれた通りに読ませてやるべきか。これを読んでも、我が甥は快活で人懐こい男児のままでいてくれるのか。
もし申し出を断るとしたら、何と言って断れば良いのか。

それぐらいの判断もなかなか下すことができない。
つくづく人として低級であるなあと、自嘲。