旅打ち日記 名古屋編③ 名古屋競輪場(2016.7.19)

旅打ち最終日は連休明けの平日。昨日までの道連れの友は真っ当な社会人としての日々に一足先に戻っており、本日はソロでの戦い。

戦いの前に高島屋51階のシャレオツなカッフェエにて、優雅にブランチ。

 

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しばし絶景と食事を楽しむ。旅先でゆったりとしたときを過ごし、己の来し方行く末に思いを馳せる。とても贅沢で、大切な時間。
張り詰めすぎていた弦を一度思いきりゆるめ、また適度に張り直すかのような。
どこまでも続く空、いつか空に届くと信じていたあの頃の自分、そして今の自分が心の奥底で訴えかけてくる……


こんなところで澄ましこんでいるヒマがあったらバクチじゃバクチ!

というわけで、すぐさま下界に降り立ち、今日も血なまぐさい鉄火場へ。
灼熱の名古屋三連戦、最後の舞台は名古屋競輪場

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外観こそ思ったよりはポップな感じではあるが、場内で見かける人々の濃さがまるで違う。
若いカップルや家族連れも結構見かける中央競馬
もう若いとはいえない女性の姿ならチラホラ見かける地方競馬場
そして、まったく若くない男性しかほぼいない競輪場。
おそらく三十代後半の自分が最年少ぐらいの部類に入ると思われるのだから、その空間の濃さ、香ばしさたるや想像に難くないだろう。

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競輪場は人生で3回目。川崎で少しだけ勝ち、松戸でオケラになったことがある。さて、名古屋ではどうなるか。
それにつけても、こんなに爽やかな空の下、自転車の競走にお金を賭ける大人になっちゃったんだなあ。感慨もひとしお。

本日は新聞等は購入せず、備え付けの出走表とスマホでの情報をもとにアレコレ考えるスタイル。どうせ競輪の心得はないのだし、あまり多くの情報を得ても処理しきれないであろう自分にはこれで充分。
まずは出走表を見て、各選手を所属地区ごとに分類する。
競輪の面白いのが、個人戦であり団体戦でもあるというところ。地区ごとに形成されるラインはまず共闘し、他のラインよりも有利にレースを進められるよう駆け引きを繰り広げる。
強いラインの強い選手から上位入着するというのが予想の王道だが、人間関係というのも大きな要素となる。
同じラインの中の先輩後輩関係はもちろん、現時点の成績から見てより勝利が必要な選手は誰かとか、この選手は早々に上位入着の見込みが薄くなったら仲間の選手を押し上げるような走りに切り替えるんじゃないかとか。他にも出走メンバーに同地区の選手がいない一匹狼はどんな風にレースをかき回すか、などなど。
競馬にもまったくそういう要素が無いわけではないが、競輪の予想には人間ドラマの妄想といった趣きが多分に含まれており、これはこれでまた違った面白さがある。

また、買い方も難しい。昨日の名古屋競馬ほどではないにしろ、相当絞って買わないと簡単にガミるので、手広く構えるやり方は基本的にはダメ。この二日間は軸1頭のヒモ4〜5頭なんて買い方が当たり前にできる中央競馬がいかに初心者に優しいか痛感いたしました。

さて、車券片手にレースを見守る。車券師たちの怒号や罵声(声援と表現できるものはほぼ無い)の中スタート、様子見といった感じの前半。
良いお天気の中、仲良く並んで走ってるかのようですらある。

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影だけ切り取るとこんな感じ。

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しかしラスト2周あたりで模様は急変。誰かが仕掛けを打ち、競り合いが始まり、終盤は捲り合い、更に高まる怒号、罵声、絶叫……

車券はなかなか的中しないが、猛烈に楽しい。
競技賭博というものは古代ギリシアの頃から存在するというが、人間にはこんなんめっちゃ楽しいやんと感じてしまうようにDNAに刻み込まれているのだろう。

さて、競輪の花といえばガールズケイリン
中年特有のスケベ心を出し、ガールズの2レースはスタート付近に移動し、間近で観戦。

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いやー、アスリート女子ってのは魅力あるよなーなどと鼻の下伸ばして眺めていたところ、自分の隣にいたジイさんがバカでかい声をあげる。
「何じゃ!? 4番は随分腹が出とるのお!」
「こら! 4番! 腹へこませい!!」
この野次にギャラリーは大爆笑。気を良くしたジイさんは何故か隣にいた自分の肩を叩いてきて誇らしげ。いやちょっと、仲間と思われるじゃないか。
4番(青)はそんな乙女心を踏みにじる野次にも動じず、勝負に集中している模様。

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まあたしかに体格は良い。
そんな彼女は発奮したのか、3位入着の結果を残しました。

野次といえば落車があったときは凄まじい。最終レースで本命の選手がラストのカントで派手に落車したときはまあ激しいブーイングが浴びせられまくっていた。
「キサマ、何やっとんじゃアホ! そのまま◯ね!」
何人もの大人たちが声を荒らげこんな言葉を次々発する。
自転車で転んだ人には大丈夫かと心配したり、かわいそうと思ったりするごく真っ当な道徳心の持ち主は面喰らうこと請け合いです。
ちなみに自分は、この選手が飛んでくれたおかげで三連複5000円ゲットし、収支プラスになったので、コケてくれてありがとうという、これまた非人道的な感情を抱いていたのでした。

競輪では今までで最高配当だったので記念写真。

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というわけで、名古屋遠征は3戦3勝で幕を閉じた。3日分合わせても新幹線片道分に少し足りないぐらいなんで、まあささやかな戦いではありましたが、実に楽しく、夢のような3日間でした。旅打ち最高。

お土産買い込んで、矢場とんでわらじとんかつ食って帰路につく。
車窓の景色を見ながら、イヤホンから流れてくる音楽は「1/6の夢旅人
名駅周辺と競馬場と競輪場しか行っておらず、旅行感はまるでない3日間だったが、これを聴いているといっぱしの旅をしてきた気持ちになるのが良い。

帰りつく前から既に次の旅打ちに思いを馳せる。こんないいもんだったらすぐ行きたい。
とりあえずこの夏のうちに新潟ぐらいは行けるだろうか。

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